日々の音色とことば:

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『原発に反対する唯一の手段は。』

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震災から二週間。

東京で暮らしていると、不思議な感覚になってくる。夜の街は暗く光を落としている。近所のスーパーやコンビニに行くと、水が売り切れ、がらんどうになった棚が目に入る。つい最近まではガソリンスタンドの大行列だった。そのちょっと前はパンやカップラーメン。トイレットペーパーはまだ品薄が続いている。

テレビをつけると原発と放射能漏洩のニュースが続いている。日々予断を許さない状況が報じられる。

どの発表が正しいのか、誰の言うことを信じるべきなのか、多くの人が迷っているように思える。出所が怪しいチェーンメールのデマだったら、はるかに対処は簡単だった。けれど、政府の発表は隠蔽されていると多くの人が疑うような状況面で、専門家の意見同士が対立するような局面で、海外の新聞すらも大袈裟なニュースを報じるような場面で、何を信じるのが正解なのか。

だったら、結局のところ「自分の信じたい事実を信じる」しかないんだな、と僕はタカをくくっている。それでも、そんな中、人々に徐々に沸き上がってくる不安と苛立ちは、数百キロメートル北にある本当の災害への衷心さえ、震災直後に語られた復興の希望さえも、覆い隠そうとしているかのように思える。

それでいて、東京での生活は奇妙なほど平穏だ。取材にでかけ、帰りにカフェでコーヒーを飲む。twitterをチェックする。昼飯を牛丼にしようか定食屋に行こうか悩んだりする。温かい風呂に、ゆっくりとつかる。被災地の人達が抱えている大きな悲しみ、避難所などでの困難な毎日と違い、今の東京での暮らしは日常と殆ど変わりない。

何かがおかしい。そんな気がする。

原子力発電所と電力エネルギーにとって今の僕が思うことを率直に書こうと思う。

人々の心の中で「そうは言ってもさ……」という言葉の置かれる場所が少しずつ変化しているような気がしている。少なくとも僕はそう。震災前、多くの人が原発反対を訴えてきたけれど、それを耳にした僕の本心は正直なところ「そうは言ってもさ……」だった。反対はわかる、でも、そうは言っても電力は必要だよね、というような。推進派と反対派の間で「しょうがないよね」というぼんやりしたグレー層が広がっているような。「難しい問題です。私たちもよく考えていかなければいけませんね」という優等生的な回答で(微妙に責任を回避しながら)済ませてしまうような。

でも、今回の事故と計画停電を経て「しょうがないよね」という気持ちの風向きが変わってきている。

太陽光発電とかマイクロ水力発電とか風力発電とか、自然エネルギーで原子力を代替させるためのいろいろなアイディアがあるということも知った。スマートグリッドの考え方も。もちろんコストや実現性の問題もあるだろう。でも「そうは言ってもさ……」。人が生まれ育った場所から退避しなければならなくなるような事故なんて、もうあってほしくはないというのが正直な気持ち。電力が必要なのはわかるけど、そうは言っても、という。

そんなことをつらつら考えているうちに、一つの言葉を思い出した。

戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである。



これは、英文学者・吉田健一氏の言葉。ピチカート・ファイヴの小西康陽さんが、単行本『ぼくは散歩と雑学が好きだった。 小西康陽のコラム1993-2008』などでたびたび引用し、有名になった。

ちなみに、原文をあたったこちらのブログ記事によると、吉田健一氏の文章の前段では

戦争に反対する最も有効な方法が、過去の戦争のひどさを強調し、二度と再び…と宣伝することであるとはどうしても思えない。


と書かれている。

もちろん、今の日本は戦争状態じゃない。けれど、この文章の“戦争”を“原発”と読み替えた時に、何かが見えてくるのではないだろうか?と思っている。

これからの時代を考えたときの「各自の生活を美しくして、それに執着する」とは、どういうことなんだろうか。

原子力や電力については僕は素人なので、とりたてて何かを言おうとは思わない。正しいことを言えるとも思わない。けれど、今の日本に生まれつつあるソーシャルな結びつき、中央集権的なものから分散型なものへの社会のあり方の変化は、その先行きを示す何かのヒントになるんじゃないかということを思っている。

もちろん、この震災をきっかけに生まれつつある音楽や芸術のあり方も。





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